ウィーンフィルの本拠地、ムジークフェラインザールでの録音。
沈み行く太陽を、この手の中に抱きかかえたような
物凄く壮大なサウンドだ!
オケ、4人のソリスト、合唱のバランスが非常に良く
各パートの音が、しっかりと聞き取れる素晴らしい録音だ!
目を閉じて、両腕を広げて、天を仰ぎたくなる!
試しに、実際にやってみた。
そしたら、不思議な事に、眉間にシワがより、顔を下に向けて
両腕を胸の前で重ね、何かにすがりたい気持ちになる。
このモーツアルト最後の作品には、有名なエピソードがある。
モーツアルトのもとに無名の使者がたずねてきて
この曲の作曲を依頼し、その使者を、自分の死を告げる使者と思い込み
自分の冥福を祈り、泣きながら作曲したとの事。
モーツアルトはレクイエムの第1曲のみを完全に完成させ
1791年12月5日、悪性チフスのため、感染を防ぐ為に
急いで共同墓地に埋葬されたので、妻、友人がかけつけた時には
どこに埋葬されたかわからなかったそうだ。
未完の部分は、弟子の手で
モーツアルトのスケッチや指示をもとに、補筆完成したとの事。
この、ベーム、ウィーンフィル、ウィーン国立歌劇場合唱団、4人のソリストの
レクイエムは、亡くなった人を送る曲というよりも
モーツアルトの、まだ、俺は死になくないんだ!もっともっと生きたいんだ!という
まるで、握った拳から血が流れ出るような、そんな悲痛な思いを感じる演奏だ。
このCDを聴いて、フランダースの犬の、有名なラストシーンの
天使に送られて天国に行く場面を思い出したり
また、荒波が巌に打ち付けられ、白く大きな波しぶきを上げるような
そんな場面を連想させるような厳しさを感じたりした。
このCDの演奏は、偉大なる音楽家の、偉大なる奏者による、偉大なる名演だ!
クラシック音楽の醍醐味と、サウンドの美しさを
全て備えた、文句無しの名盤である!
次回、ブーレーズ、クリーヴランド管弦楽団/ストラヴィンスキー:ペトルーシュカ、春の祭典
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